する/しない

お泊り合宿の深夜、主人公と二人っきりになった後部屋に戻ったカズさんは…

「びっくり…しちゃった、ハハ……」

僕は自室に入り、まだ少しだけ震えている右手を見た。
ただ、指先がかすかに触れ合っただけなのに。
僕だけがこんなに動揺してる……

「何、やってるんだろう」

そう呟いてはベッドの端に力なく座り込む。
きれいにベッドメイキングされたシーツが僕の重みでくしゃくしゃになる
まるで今の僕の気持ちを写した鏡のように。

「はぁ……」

我ながら勇気の出せない自分に嫌気がさしていた。
こんなため息、もう何度ついたんだろう……
さっき伝えられたら良かったのに

「君のことが好きなんだ」って。

リビングで二人っきりだったあのとき、きっとチャンスだった……
だけど結局僕は言えなかった。

後悔したところで、ため息をついたところで時間が戻るはずもない。
事態が好転するわけでもない。
だけど、僕は性懲りも無く考えてしまう
彼女のこと、あの時のことを……

時計をみると、すでに時間は夜中の0時を過ぎていた。

「あ、彼女、今日帰るんだよね……」

またすぐに会えるはずなのに、なんだか寂しいな……

そう思った時だった。
ふと、時計の隣に置いてあった鉢植えが目に入る。

この子は今日咲いてくれるかな……

蕾の開きかけたレモンマリーゴールド。
恐らく今日か明日にはきれいな黄色い花を咲かせてくれるはず。

「そっか……うん、決めたよ」

君も頑張って花を咲かせようとしているんだよね、だから僕も頑張らないと、ね

目覚めた時、もしこの花が開いていたなら伝えよう、僕のこの気持ちを

「好きです」って……

複雑な気持ちを抱きながら僕は横になった。
朝になるのがちょっぴり怖くて、なかなか瞼が落ちてくれなかったけど……

植物が好きでポプリまで作ったり、合宿の度に家にある植物を持ってってはお世話をするカズさんがめちゃくちゃ好きなんですが、ここまで植物を愛してる人乙女ゲキャラにいるー?(マイ〇ー風に)
そして少し控えめなところも愛おしくて、そんな彼を表現したくて書きました。
植物と絡めたくてこのような作品を書きましたが、花頼みではなく、きっと自身で告白は決めたと思います。決める時はビシッと決める人ですから!実はSってところもめっちゃツボ!!
あとがき、というよりもカズさんへの愛を綴る場になってしまいましたね笑。